東京地方裁判所 平成12年(ワ)9551号 判決 2000年10月17日
原告
A
右訴訟代理人弁護士
伊東大祐
同
向井千景
同
坂井大輔
被告
静アート株式会社
右代表者代表取締役
B
右訴訟代理人弁護士
西村國彦
同
町田弘香
同
木下直樹
同
松井清隆
同
泊昌之
同
松村昌人
同
蓮見和也
同
松尾慎祐
同
上田直樹
同
久保健一郎
同
望月賢司
主文
一 被告は、別紙物件目録記載の絵画を販売してはならない。
二 訴訟費用は、被告の負担とする。
事実及び理由
第一請求の趣旨
主文と同旨
第二当事者の主張
一 請求原因
1(一) 原告は、株式会社講談社発行の月刊少女漫画雑誌「なかよし」の昭和五〇年四月号から同五四年三月号までに連載された漫画「キャンディ・キャンディ」(以下「本件漫画作品」という。)のストーリー原稿を作成した者である。
(二) 被告は、絵画・美術品の販売を目的とする株式会社である。
2 本件漫画作品は、原告が、ストーリー、登場人物のせりふ等を書き下ろし、それに従ってC(以下「C」という。)が、漫画に仕上げることによって完成されたものであるから、原告作成の原作を原著作物とする二次的著作物である。
3 本件漫画作品の登場人物を描いた別紙物件目録記載の絵画(以下「本件絵画」という。)は、本件漫画作品の主人公キャンディを初めとする別紙物件目録の登場人物目録記載の各登場人物を描いたものであり、本件漫画作品における主人公キャンディを初めとする各登場人物の絵を複製又は翻案したものである。
4 被告は、平成一一年一〇月ころから、本件絵画の展示・販売会を開催した。すなわち被告は、平成一二年一月一四日から同月一七日、アクトシティ浜松において、「こんにちは『キャンディ・キャンディ』C展」を開催し、また、同年二月には、広島県立広島産業会館において、「こんにちは『キャンディ・キャンディ』C展」を開催し、各展示・販売会において、本件絵画を展示・販売した。
5 被告は、今後も本件絵画を販売し、原告が本件漫画作品について有する複製権又は翻案権を侵害するおそれがある。
6 よって、原告は、被告に対し、本件漫画作品について、これを二次的著作物としその原作を原著作物とする原著作者としての著作権(複製権又は翻案権)に基づき、本件絵画を販売することの禁止を求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1(一)、(二)は認める。請求原因4については、そのうち、被告が、平成一二年二月に、広島県立広島産業会館において、「こんにちは『キャンディ・キャンディ』C展」を開催し、同展示・販売会において、本件絵画を展示・販売した事実は、争うことを明らかにせず、その余の事実を認める。
2 請求原因2、3、5は否認ないし争う。
第三当裁判所の判断
一 請求原因1(一)、(二)及び4は、当事者間に争いがない(ただし、請求原因4のうち、被告が、平成一二年二月に、広島県立広島産業会館において、「こんにちは『キャンディ・キャンディ』C展」を開催し、同展示・販売会において、本件絵画を展示・販売したとの点は、被告において争うことを明らかにしないから、自白したものとみなす。)。
二 請求原因2について
請求原因1(一)(原告が、株式会社講談社発行の月刊少女漫画雑誌「なかよし」の昭和五〇年四月号から同五四年三月号までに連載された本件漫画作品のストーリー原稿を作成した者である事実)は当事者間に争いがないところ、証拠(甲第一号証、第二号証)及び弁論の全趣旨によれば、本件漫画作品は、当初から、原告が作成した原作原稿をCが漫画化するものとして株式会社講談社発行の月刊少女漫画雑誌「なかよし」編集部によって企画され、実際にも連載の各回ごとに原告が小説の形式で原作原稿を作成し、これに基づいてCがコマ割り、作画等の作業を行うという手順で制作が行われたものであることが認められる。右事実によれば、本件漫画作品は、原告の創作に係る原作原稿という著作物を翻案することによって創作された二次的著作物に当たるというべきである。
三 請求原因3について
証拠(甲第五ないし第九号証)及び弁論の全趣旨によれば、キャンディを初めとする別紙登場人物目録記載の各人物は、いずれも本件漫画作品において描かれている登場人物であって、本件絵画はこれらの登場人物を描いた絵画であることが認められる。これによれば、本件絵画は、本件漫画作品における主人公キャンディを初めとする登場人物の絵を複製又は翻案したものというべきである。
四 請求原因5について
前記二及び三に認定したところによれば、被告が本件絵画を販売することは、原告が本件漫画作品について原著作者として有する複製権又は翻案権を侵害することになるというべきところ、証拠(甲第三号証)及び弁論の全趣旨に、請求原因4(被告が、本件絵画を展示・販売した事実)を併せ考慮すると、被告が今後も本件絵画を販売するおそれがあると認められる。
五 以上によれば、請求原因1ないし5がいずれも認められるから、本件漫画作品について、これを二次的著作物としその原作を原著作物とする原著作者として原告の有する著作権(複製権又は翻案権)に基づき、本件絵画を販売することの禁止を求める原告の請求は、理由がある。
六 よって、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 三村量一 裁判官 和久田道雄 裁判官 田中孝一)
<以下省略>